信仰管理ゲー『The Shrouded Isle』レビュー。インパクトのある設定だがその実態は地道なマネジメントゲーム

ゲームレビュー

今から497年前、価値のない人間はこの世から消えうせることを、我々の創始者は予見していた。

「栄光の神は再び現れ、忠実な信者に恩恵を与えるだろう」

されど、我らの村には罪人もいた。

司祭長として、私の手で毎季生贄となるべき罪人を選び出さなくてはならない。

最後の審判の日まであと3年。我らの中からすべての罪を無くすことができれば、神々は我々を苦痛からお救いくださるだろう。

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ゲームの内容

『The Shrouded Isle』の舞台は5つの貴族が住む村。この村ではとある教団が実権を握っており、プレイヤーは教団の司祭長として教団の活動を取り仕切りつつ、3年後に訪れる最後の審判の日に備え、季節が変わるごとに5つの貴族の中から1人を生贄に捧げます。生贄にされた家系からは反感を買いますし、教団の活動が疎かになれば神から見放されてしまいます。

「5つの貴族のご機嫌」と「5つの信仰のあり方」、この2つの要素を管理し、無事に3年目を迎えることが目的のマネジメントゲームです。

信者の『忠誠度』と『信仰』を保ちつづけることが目標

5つの貴族には『忠誠度』と、それぞれ固有の『信仰』のあり方が設定されています。

『忠誠度』には上から「熱狂的、満足、中立、不満、反逆的」の5つの状態があり、いずれかの貴族で「反逆的」が2季連続で続くとゲームオーバーとなります。

『信仰』のあり方は「無知、情熱、自制、後悔、服従」の5つがあり、基準値が設定されています。いずれかの『信仰』で基準値を下回った状態が2季連続で続くとこれまたゲームオーバーです。

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例えば一番左のケグンニ家は「無知」を保ち続けることが使命です。教団にとって知りすぎることは罪なのです。

この2つの増減を管理するために行うのが、ゲームでもメインとなる『顧問活動』です。

『顧問活動』を通じて信者の『美徳』と『悪徳』を暴いていく

それぞれの貴族は全て6人の家族から構成されています。司祭長であるプレイヤーは季節の始まりに5つの貴族から1人ずつ、計5人の顧問を選出します。

そして1ヶ月を1ターンとし3ヶ月の間、毎ターン顧問からさらに1~3人を選び『顧問活動』を行わせます。選択された顧問たちは自分の家系に定められている『信仰』を全うすべく行動します。そして3ヶ月後の季節に終わりにこの顧問から1名、神に捧げる『生贄』を決める…この流れを3年、計12回行うことが本作の趣旨です。

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ここで重要になってくるのが、一人ひとりに設定されている『美徳』と『悪徳』です。※各人の徳はゲーム開始時にランダムに設定されます。

『美徳』と『悪徳』は三段階に渡って秘匿されており、どちらも5つの『信仰』のあり方のいずれかに属しています。

一段階目では全くの不明、二段階目でどの『信仰』に属しているか、三段階目でその具体的な内容(徳の絶対値)が開示されます。徳の内容は『顧問活動』時に確率で開示されるほか、顧問選択前に調査が行えますが、調査出来る回数はそれぞれの貴族の『忠誠度』によって増減します。

顧問になった人物は活動時に自分の家系が担っている『信仰』に沿って行動しますが、それとは別にその人物が持つ『美徳』と『悪徳』も『信仰』に影響を及ぼします。

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『顧問活動』の結果画面

イオセフカ家は『信仰』が「情熱」の家系なので誰を選出したとしても「情熱」を上昇させる行動を取ります。しかし徳は別です。ナディヤ本人の『美徳』で「自制」が上昇し『悪徳』で「服従」が減少しています。つまり誰を行動させたとしても上昇する信仰と減少する信仰があるわけです。

上の画像では『美徳』の開示は三段階目なので上昇値までわかりますが、『悪徳』は二段階目なので減少値が不明です。家系による増減より個人の『美徳』『悪徳』による増減のほうが大きいので、徳の把握が攻略のポイントとなってきます。

そしてこの徳は『生贄』の決定にも大きな影響を及ぼします。

そして、異端者を『生贄』として捧げる

『生贄』を選ぶことにより発生する変化は3つです。

  • 『生贄』に選ばれた人物が持つ『美徳』の属する『信仰』の減少
  • 『生贄』に選ばれた人物が持つ『悪徳』の属する『信仰』の上昇
  • 『生贄』に選ばれた人物の家系の『忠誠度』の減少

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とくに問題となってくるのは3つ目の『忠誠度』の減少です。家族を生贄に捧げられた貴族の『忠誠度』は激減し、そのほかの4貴族の『忠誠度』は上昇します。

ただし『生贄』の『悪徳』を暴いた上でその罪が大きければ『忠誠度』の減少値を抑えることが可能です。上の画像では『悪徳』の把握が完了していますが、軽微な罪のため『忠誠度』の減少に歯止めをかけることはできず激怒されています。

『悪徳』の高い、いわゆる「異端者」を見つけ出し生贄にするというのがプレイヤーにとっての大きな仕事の1つです。

しかしゲーム序盤で徳の内容まで把握することは難しいため、『忠誠度』の高い貴族から『生贄』を選ぶ等のやりくりが必要となってきます。

なお、『忠誠度』は『顧問活動』で行動させる他、ランダムで発生するイベントの選択肢によっても上昇させることが可能です。

独立した2つの要素の一元管理

実のところ『忠誠度』と『信仰』は直接的に関係はしていません。ケグンニ家は「反逆的」だがケグンニ家の担当する「無知」の値は安定している、という状況はよく起こりえます。

独立した2つの要素を限られた方法でどちらも折り合いをつけていく、というゲームです。

ケグンニ家の『忠誠度』が著しく下がっている。であればケグンニ家の人物に『顧問活動』を積極的に行わせ『忠誠度』を上昇させなければならないが、誰もが『悪徳』を持っており、ケグンニ家の人物を活動させる度にいずれかの『信仰』が減少していく。ではケグンニ家から誰を選出すべきか、『信仰』の減少のフォローが必要なら他の4つの貴族からは誰を選出するか、生贄を出す余裕のある家系はどこか、次の季節のことも考慮せねば……。

複雑ように見えますが1回プレイしてみればすんなりと理解できるシンプルさだと思います。人狼やボードゲームのようなアナログゲームのビデオゲーム化、という印象を受けました。

感想:もうちょっとゲーム性に奥行きが欲しかった!

この手のゲームの宿命と言えますが、ゲーム内容がよくわからずに試行錯誤している間が1番楽しく、コツを掴んでしまうと作業ゲーになります。難易度選択や別のゲームモードもないためリプレイ性は正直低いです。

一応マルチエンディングでクリア時の状態によりエンディングが変わるようなのですが、ランダム要素の強いこのゲームで狙ったエンドに到達するのは面倒です。そもそもエンディングと言っても短いムービーが流れるだけですし、設定のみでストーリー性はほとんどないゲームなのでエンディング自体に惹かれるものもあまりありませんでした。

難易度・別のゲームモード・ストーリーのボリューム、このあたりがあったらもっと面白いゲームになるんじゃないかと思いました。

ただ、低価格帯のゲームなので値段分は十分楽しめると思います。気になっている方はセール時にならオススメできるかなという感じ。

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