『Oneshot』は現在Steamより配信されているパズルアドベンチャーゲームです。2017年9月7日に公式日本語化が配信されました。
フリーゲーム版も存在しています。こちらは日本語版はありません。
ストアページの説明を見てもわかるとおり、「メタ」な演出に満ちているゲームであり、ネタバレなしに語るのが難しいタイプのゲームです。ですので、既プレイの方向けの感想記事となります。
感想
愛らしいキャラクターたち
まず語るべきはなんといっても主人公であるニコくんの可愛さでしょうか。デザインもキャラクターも本当に可愛かったですね。一人称を「ミー」とした翻訳のセンスも光っていると思います。
かわいい
子供なのにいきなり大きな命運を託され不安に押しつぶされそうになりながらも、最終的には自分が元の世界に帰るためだけでなく、この世界も守りたいと願ったニコくん。愛おしい。
終盤に「ミーとこの世界両方を救おうとしてるんだね」と言われたところで目が潤みました。
サブキャラクターたちも個性的で良かったです。終焉を迎えんとする世界の中であっても、イキイキと元気に生きている住民たちにほっこりしました。ユーモアもわりとありますし。
ただそれだけに各キャラの掘り下げが物足りなかった感じがします。メイズがああなる前の姿とか、シルバーとキップが再会する展開とか、色々見てみたかったところが思いついて心残りです。
ギミック・ストーリーに組み込まれたメタ要素
勝手にファイルがアップされるギミックなんかは、海外ゲームのいわゆる『.exe』ジャンルではよく見かけますが、プレイ動画でしか見たことがなかったので自分でやるのは初めてでドキドキしました。
プログラムは全然わからないんですが、ファイルを所定の位置に置くとゲームが進む、なんてことができるとは思いもしませんでした。
私としてはもっと量も難易度も欲しかったんですが、やっぱ商業作品で勝手に人のPCのファイルをいじくるってのはまずいんですかね?
また、ストーリーにここまでプレイヤーの存在が組み込まれているゲームは初めてプレイしました。とてもうまくまとめていると思います。
プレイヤーにとってゲームとは(冷めた言い方をすれば)虚構の世界ですが、ニコにとってもこの世界は虚構です。それでもなお「この世界を、出会った人々を救いたい」と決心したニコはまさにゲームプレイヤーの写し身として表現されているんじゃないかと思いました。
他ゲームのインスパイア
フリーゲームにはあまり明るくないのですが、1周目最後の選択やモブロボットの言動は『OFF』、建物のデザインや足音へのこだわりなんかは『ゆめにっき』を想起させる物があったと思います。
フリゲ版だとPC画面にこれらの起動アイコンがあるので、作者も意識しているところはあるんじゃないでしょうか。
OneShot(一度きり)の意味
序盤に「チャンスは一度きり(You only have onshot)」と言われますが、2周目以降があることからこれがタイトルの意味ということは否定されました。では一体何が『OneShot』だったのでしょうか。
どんなゲームでも終りを迎えると「もうこのキャラたちには会えない」とか「この世界を冒険することは出来ない」という喪失感が芽生えますが、リセットしてしまえば何度でも最初からやり直すこと自体は可能です。
しかしこのゲームは一度トゥルーエンドを迎えてしてしまうと、「最初からプレイ」することはできなくなります。ワールドマシンに「ニコはもう呼ばない。今後は記憶からシミュレートしたものを見せることしかできない」と念を押されてしまうからです。
これこそが『OnShot』(一度きり)の本当の意味なんだと思います。ニコとプレイヤーの冒険は「一度きり」なわけです。ニコくんは二度と別世界に召喚されることはなく、幸せに暮らしているはずです。
もちろん隠しのセーブデータを消せば最初からプレイすることはできるんですがまぁそこに言及するのは野暮かなと。
不満点
古いRPGツクールをもとに作られているからか、UIや操作面で若干ストレスを感じることも。カメラが近いといいますか、マップの描画範囲が狭いので探索しづらいのが気になりました。
まとめ
BGMも素晴らしく、完成度の高いゲームでした、ただその分、キャラのもっと色んな面が見たかったなと思ってしまいます。
最後に、ポータルがある部屋入口の上にあった謎の時計表示ですが、発売後からリアルタイムでカウントダウンが始まって、ゼロになって初めて入れるようになっていたそうです。
つまり発売日にしたプレイした人はすぐにトゥルーエンドを見ることができなかったわけで……。
個人的には日本語化待ちですでにゼロになっている状態でプレイできてよかったです。発売日にプレイしてたら悪い意味でヤキモキしてたことでしょう。