ジョーカー繋がりということで、『ダークナイト』と『ジョーカー』の比較のお話です。
アメコミ映画の概念を変えた傑作、との呼び声も高いダークナイト。
私も大好きな映画なのですが、ジョーカーを見た今見返すとかなり配慮した『エンタメアメコミ映画』だなと感じました。
というのも、暴力シーンがかなりヌルいからです。(と言うと暴力を見たいだけの人みたいですが)
暴力をテーマにしつつも暴力シーンは控えめの『ダークナイト』
ダークナイトでは多くの死者が出ます。冒頭の銀行強盗からカーチェイス、胃袋大爆発にトゥーフェイス。
ただ、どれも痛みを感じるようなリアリティはなくアクションシーンの範疇です。
個人的には「直接的な描写を排除している」ことが理由の1つかなと思います。
ダークナイトって人が殺されるシーンを極力映しません。射殺するシーンなら大体撃つ側だけを映しているか、もしくは引きであっさりと見せます。
「撃たれて血がどばっと飛び出る」とか「死体をモロに映す」みたいなシーンは意図的に排除しています。
当のジョーカーも「ナイフで人を殺めるのが好き」というサイコパスめいたことを言っていますが、彼が実際に人をなぶり殺したシーンってないんですよ。
ギャンボル坊やの最期や偽バットマンのビデオレターなど、彼のヤバさが伝わってくるシーンはたくさんあるものの直接的な殺人・暴力映像は巧妙に隠されています。
「あえて映さないことで想像力を掻き立て恐怖心を煽る」という見方もできますが、この映画に関しては興行的な大人の事情のほうが強いんじゃないでしょうか。
実際、ダークナイトはこのヤベー「ヒースジョーカー」を中心に据えながらも年齢制限はPG-13に抑えることに成功しています。
暴力をテーマにしていながらも暴力シーンはそこまで過激にはせず、「アメコミ映画」に仕上げているんだなと思いました。
暴力の力強さをガツンと訴えかけてくる『ジョーカー』
一方の『ジョーカー』。
暴力シーン自体はわずかですが、年齢制限はダークナイトより上のR-15指定。
実際、『ジョーカー』での殺害シーンはどれも過激でした。
必死に逃げ惑うも無慈悲に撃たれるサラリーマン、ハサミを突き立てられ血しぶきを上げる元同僚。ロバート・デ・ニーロの射殺シーンも1発目からトドメまで真正面から映し続けていましたね。
ダークナイトとは違い、思わず目を覆いたくなるほどのリアリティがある暴力シーンの数々です。
もちろんどっちが良いとか悪いという話ではなく、『ジョーカー』がアメコミ映画という括りから完全に逸脱しているとんでもない映画、だということです。